低温ハンダによるIC取り外し

セットアップ

低温ハンダを回収するためにハンダフィルターを2本使います。
ハンダフィルターAを、普通のハンダ吸い取り用に、ハンダフィルターBを、低温ハンダ吸い取り用とします。
ハンダフィルターBは、低温ハンダのリサイクル用で、低温ハンダを回収します。
これを、足踏み式ハンダ吸い取り器からのエアーチューブを繋ぎ変えて使います。

低温ハンダを作る

低温ハンダは、鉛フリーはんだではない、鉛50%,錫50%の組成に近い普通のハンダに、ビスマスを加えることで作ることができます。
ビスマスは無毒の金属で、ここで作る低温ハンダも鉛の毒性のみが取扱い上の注意となります。
この鉛50%,錫50%の組成に近い普通のハンダと、ビスマスを半々に混ぜて低温ハンダを作ります。
この低温ハンダの融点は、96度以上の水の沸騰するくらいの温度になります。
写真1
ビスマス・インゴットをニッパで齧って、欠片をハンダと同じくらいの量作ります。
写真2
ハンダこてで溶かして、よく混ぜ合わせます。
ここで、酸化皮膜,ゴミなどは片方に寄せて、ピンセットで排除します。
均一に混ぜ合わさることができたら、水銀のようなものになり、なかなか固体にはなりません。
写真3
棒状に成形した上、ドライヤーなどで風を送って冷やします。
ビスマスは、ビスマス結晶が人気になっていて、アマゾンなどで100g1000円位で簡単に購入できます。
量は、100gあれば十分です。
決して、ビスマス結晶用のkg単位の購入は、必要ありません。


ICを取り外す

写真4
例として7408(マゼンタの四角)を取り外します。
写真5
ハンダフィルターAで、ハンダを吸い取ります。
写真6
ICにつながっているスルーホールを開通させます。
アースのスルーホールで開通できないスルーホールは、少しの低温ハンダでハンダ付けして吸い取れば開通します。
ICにつながっている全てのスルーホールを開通させます。
開通しにくいスルーホールは、覚えておいて、低温ハンダでハンダ付けするときに、多めに低温ハンダを盛るようにします。
写真7
低温ハンダでハンダ付けします。
たっぷりの低温ハンダで、隣の足がつながるようにハンダ付けします。
なるべく水平にしたまま、ハンダこてで低温ハンダを溶かしながら、ピンセットでICの端をこじります。
一度ICが浮くようになれば、逆のICの端をピンセットでこじります。
ここまでくれば、スポッとICが取れます。
このICの取り外し作業中、ICの下に低温ハンダが垂れるので、注意しながら作業を行ってください。
また、なるべく水平に保ったままにします、そうしないと低温ハンダが下に傾いた方向に流れてしまいます。
下を覗きながらピンセットを差し入れないといけないので気をつけてください。
シリコンシートを敷いておくのが良いでしょう。
もし、ICが取れないのに、盛ってあった低温ハンダが下に流れて無くなった場合、慌てずに、低温ハンダを追加すれば良いだけです。


ICを取り外す(その二)

ここまでの取り外し方で、裏面に低温はんだ付けをして水平にしながら、基板の下のICをこじるという難しい操作が必要でしたが、部品面にはんだ付けしてICをこじる方法があります。
写真6までの作業の後、次のように部品面に低温はんだ付けをします。
写真8
ハンダこてで低温ハンダを溶かしながら、ICをこじります。
ICの周りに高い部品などがない場合は、こちらの方が、安全で簡単です。


低温ハンダの回収

写真9
この様にICの端子に低温ハンダがついています。
これをハンダごてをあてながら、ハンダフィルターBで吸い取ります。
写真10
スルーホールも、ハンダフィルターBで吸い取ります。
写真11
低温ハンダを回収し、棒状に成形し、次回のIC取り外しに使えるようにします。
ハンダフィルターBの低温ハンダも回収します。
このとき、スチールウールに付いている低温ハンダは、ハンダこてを当てれば簡単に流れ落ちます。
鉄の繊維は、低温ハンダをまとめているときに、ピンセットで取り除きます。


ICが外れる理由

ICが外れる理由は、低温ハンダが開通しているスルーホールに流入して、リードとスルーホールに接触して、くっついているわずかのハンダに低温ハンダが混ざり、この部分の融点が低くなり、液体になりやすくなるので外れます。
したがって、低温ハンダではんだ付けする前に、ICにつながっている全てのスルーホールを開通させることが必要ですし、これがコツとなります。
ここで言う開通とは、スルーホールにICのリードが入ったまま、ハンダで塞がっておらず、空気の流入が可能の隙間があることを言います。


リードでハンダ付されているスルーホールの開通の仕方

リードでハンダ付けされているスルーホールを開通させるには、スルーホールの下まで熱が伝わって、ハンダ付けされているスルーホールとリードの全部のハンダが、溶けていなければなりません。
あてているハンダこての具合いで、リードが動いている感触(溶けているとリードが動く)があれば、少しの間をあけてハンダを吸い取ります。
この感触がないと、ハンダこての熱が伝わっていません。
コテ先をクリーニングしたり、ペーストを塗るなど、熱が伝わるようにします。
もし、スルーホールが開通できない場合は、次のことを考えます。

  1. ハンダフィルターのノズルの形状が良くないのでニッパで整える
  2. 吸い取るタイミングが遅いか、ペダルを踏む力が弱い
  3. ノズルを掃除する
  4. ハンダこての熱量が少ないのでワット数の大きいハンダこてに変える
  5. アースなどの熱容量の大きいスルーホールには、低温度ハンダを入れると溶けます。


ICのこじり方

低温ハンダでICを取り外すときに、ICを浮かせるために、ICをこじるのですが、ピンセットより千枚通しの方が良いかもしれません。
ICの端に千枚通しの先端を当てて、押すように力を入れるのですが、先端に続くテーパーの部分で、押し込むほどに徐々に隙間が開くようになるので、ICを浮かせるには都合が良いのです。



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